明確な未来のため,過去はうち捨てられなければいけない。そして過去は,想い出に変わる。未来があれば,想い出は輝き続ける。
アップル社CEOのスティーブ・ジョブズは,パリのアップルエキスポで,マックOS Xのパブリックベータを「マックの未来」と発表,オンラインストアで29.95ドルで販売開始した。このベータ版には,新しいメールソフト,クイックタイムプレイヤー,シャーロック検索ツール,そしてカーボン化されたインターネットエクスプローラーなどが付属している。
前回(過去記事)の補足。90年代始め,アップルはコープランドというプロジェクトを立ち上げ,ユニックスをもしのぐような,ハイエンドなOSを構築しようとした。MSのウインドウズでも同様の視点から,NTがスタートした。NTは(とりあえず)発売され続けてきたが,コープランドは日の目を見ることはなかった。ひっ迫した予算は,手短な現行マックOSの改築の方に回されていった。コープランドのわずかに伝えられた思考は夢を持たせるものだったが,ちょっとだけ夢を見過ぎた,とでも云っておこうか。そして,破棄された。
ラプソディの開発がはじまったのは96年終わりごろ。崩壊的な経営難の中で,ラプソディはコンシューマー向けOSとしての道を閉ざされながらも,97年のネクスト社買収によりネクストステップ(オープンステップ)を基盤とし,全体的な骨格を整え,マックOS Xサーバーとして形となった。そして今回のコンシューマー向けマックOS Xの一部にも受け継がれている。紆余曲折を経た5年間,名を変え,品を変え,最終的にはJAVA環境も統合した甘い甘いCocoaとして,やっと次世代OSの形で表舞台に出る時を迎えた。歴史と一言ですますにはあまりにも激しいダッチロールを繰り返してきて,今,着陸。辛かった過去も,これですべて「想い出」に変わる。
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